スペシャリストインタビュー 株式会社シンクロ・フード 大久保俊さん
飲食業界をITの力で支える
シンクロ・フードは改善と挑戦を続けていく
今回は、『飲食店ドットコム』をはじめ、飲食店の出店開業・運営をワンストップでサポートするプラットフォームを運営している、株式会社シンクロ・フードに伺いました。
お話をお聞きしたのは取締役兼執行役員開発部長(CTO)を務める大久保俊さん。大久保さんは、学生時代にインターンをしたあと、一度は別の会社で営業職を経験。再び同社に戻り、現在はCTOとしてエンジニア組織をリードしています。
インタビューでは、シンクロ・フードの魅力やエンジニアに求められる要素、そして将来の展望についてもお話を聞きました。
IT×飲食に感じた可能性とおもしろさ
――最初に、大久保さんの現在までの経歴についてお聞かせください。
大学の専攻は経営学でしたが、ちょうどブログやSNSの黎明期で、ビジネスの場としてWebサイトを利用する人たちが増えたころでした。
私の場合、内定先が決まり時間があったときに、「インターネットで何かビジネスができるのではないか」とWebサイトをつくったことが、この業界に興味を持つきっかけでした。「新しい世界が広がりそう」というワクワク感、そしてインターネットの可能性を感じましたね。
そのころシンクロ・フードにいた知り合いから誘いを受けて、卒業までのあいだインターンをやってみることにしたんです。Webサービスが成長していく過程を見るのはとても楽しかったのですが、卒業後はすでに内定を得ていた食品メーカーに営業職で就職しました。
――そのあとシンクロ・フードに戻ってこられたということですね。
営業として働いているあいだも週末などにコードを書いていて、「これを仕事にしたい、エンジニアになりたい、シンクロ・フードに戻りたい」という気持ちは持ち続けていました。社長とはずっと連絡を取っていたこともあって、3年間働いて辞めて、戻ってきたという経緯です。
技術は独学、CTOとしてサービスとも向き合う
――大久保さんにそこまでさせたシンクロ・フードの魅力はなんだったのでしょうか。
新卒で食品メーカーに就職したくらいなので、もともと食品業界・飲食業界には興味がありました。
ただ、飲食業界は歴史が長いので、どうしても考え方などが凝り固まってしまっている部分もあります。その中でシンクロ・フードは、当時から他と違うことをやって、業界を変えようとしている会社でした。ITと飲食業界をかけ合わせたサービスは新鮮で、「ここに人生をかけてみたい」と思わせる魅力がありましたね。
――なるほど。Webサービスをつくるために必要な知識は、ご自分で勉強されたのですか?
最初は完全に独学でした。うまいやり方ではなかったと思いますが、とにかく何かをつくりたくて手を動かしていました。そのうちちゃんとしたエンジニアの人と話す機会も増えてきて、自分もコンピュータサイエンスを勉強しないといけないと思うようになって、あとから基礎を学びました。
技術書も月に何冊と読んでいましたが、興味からというよりは、基礎固めのためだったように思います。当時は四六時中技術やものづくりについて考えていました。
――そうやって着実にスキルも磨いてこられたのですね。やはり大久保さんの技術スキルが周囲から評価されて、CTOに後押しされたのでしょうか?
むしろ逆で、技術とビジネスと両方に関心があったから、今CTOとしてサービスと向き合う役割ができているのだと思います。
社内だけを見渡しても、私よりもっと技術力の高い人はたくさんいます。でも技術とサービス、もっと言うとビジネス的な観点も持って「自社のサービスを技術を使ってよりお客さまに喜んでもらうには」をとことん考え抜くタイプのエンジニアは、少なかったのかなと思います。
事業の多角化でコロナ禍でも成長
――次にシンクロ・フードのビジネスモデルについて聞かせてください。
コロナ禍で大きく影響を受けたこともあり、中途採用で応募してくださる方の中には、飲食業界に不安を感じる方もいると思います。ただ、飲食店向けの求人サービスは事業の大事な柱ですが、シンクロ・フードには他にも多くのサービスがあります。コロナ禍で迅速に業績を回復し、利益を上げられたのも飲食店の出店開業・運営から退店まであらゆるフェーズでサービスを提供できる、つまりマネタイズのポイントが複数あったからです。(詳しくは、paizaの企業情報ページもご覧ください)
――コロナ禍で変わったこと、変えざるを得なかったことはありますか。
迅速に回復できたと言いましたが、2020年はやはり大きな打撃を受けました。私たち自身もそうですが、お客さまである、飲食業を営む企業にとっては本当に苦しい時期だったと思います。
そのとき、当社は飲食店がテイクアウトサービスを提供できるプラットフォームを無償で公開しました。ビジネスというより、飲食業界に少しでも役に立ちたいという思いからです。社長の発案でしたが、開発部も積極的に取り組みました。店内飲食が軒並みできなくなったころだったので、テイクアウトに切り替えてなんとかがんばった飲食店も多いと思います。
機会の差が生まれることを嫌う社風がリモートに合致
――リモートワークを導入されたのもそのころですよね。
はい、コロナのタイミングでフルリモートになりました。もともと柔軟な働き方を推奨していて、もっと働く環境をよくしたいと思って準備はしていたので、コロナで一気に実行に移しました。思っていた以上に問題なく移行でき、今もエンジニアはもちろん、ディレクターやデザイナーも基本的にはリモートワークです。
――リモートへの移行にあたって大変だったことはありませんでしたか?
社内に関しては「リモートでできない理由を説明できないのであれば、リモートで問題ないですよね」という考え方だったので、あまり問題はなかったですね。変なこだわりがなく、ロジカルに物事を考えられるのは当社のよい点だと思います。
また、機会の差が生まれることを嫌うメンバーが多くて、特定の人たちだけで密なコミュニケーションを取るとか、話が勝手に進んでいるとかを極力避ける社風があります。特に開発部は、全員に対して都度同じ情報を共有する意識があったので、リモートワークとの相性がよかったと思います。
もちろん人によってリモートワークが合う・合わないはありますが、全体としてはリモートになってむしろよかったと言うエンジニアが多いですね。
――今後もその方針は続きそうですか。
開発部に関しては、リモートをなくすことはないと思います。当社のサービスはベースはシンプルなので、リモートでうまくコミュニケーションをとりながら十分進めていけます。
Web開発に限らず、技術が好きで、多様な経験を持つ方を歓迎
――つづいて、シンクロ・フードのエンジニア採用について教えてください。採用ではどういったところを見ていますか。
採用の軸としては、まずは技術が好きであること、そして技術を学び続けることを大切にしている人であることが挙げられます。組織が小さいうちは、特にスキルを重視した採用をしてきましたが、今はスキルを磨きたい、向上させたいという志のある人もチームに入ってもらっています。
また、求める人物像については、明確に「オーナーシップ」「やりとげる」「成長し続ける」「意思を伝える」「現状を疑う」の5つを定めています。これは新卒でも中途でも同じです。
――paizaから応募される方にはどんな印象をお持ちですか。
paizaを利用している時点で、コードを書くのが好きだと分かっているのは助かります。問題をしっかり解いて高いランクを取るためには、ある程度勉強や対策も必要ですし、自己研鑽できる方が多いのでしょうね。
――求人票に「SIer出身者活躍中」と記載されているのも理由があるのでしょうか。
今のシンクロ・フードは、スタートアップ期の自社サービスによくある、品質度外視でスピード重視というフェーズではありません。技術も大事ですが、SIerで顧客の課題をヒアリングし、しっかり作り込んで納品するプロセスを経験してきた方も活躍していただけます。SIerにいると当たり前だと思うかもしれませんが、その経験は非常に強みなんです。自社サービスを開発したいという思いと、SIerでの経験を当社でうまく生かしていただけると思います。
採用要件に挙げている、Web開発の経験がある方はもちろんですが、個人的にはもしその経験がなくても開発現場の修羅場をくぐりぬけてきたなど、多様な経験を持つ方に来てほしいですね。
大切なのは当事者意識を持ってサービスと向き合うこと
――大久保さん自身は、どのような方と一緒に働きたいと思いますか。
やはり当事者意識がある人ですね。さきほど挙げた観点の中でいうと「オーナーシップ」が特に大切だと思っています。
言われたことをやるのではなく、自ら落ちているボールを拾いにいける人。自社でサービスを開発している会社には、そういったオーナーシップがある人はとても頼りになるんです。自分たちのサービスを子どものように思って育てられる、どうやったらよくなるかを考え続けられる、そういった人には安心してサービスを任せられます。
あとはエンジニアであれば、ゼロから新たな価値を生み出すこと、価値創造も大事にしてほしいですね。
(参考)価値創造の取り組みについては、シンクロ・フード エンジニアインタビューでもお話しいただいています。
――今のエンジニアチームはどうですか?
「みんなでサービスを作っていこう」というスタイルなので、オーナーシップのある人が多いと思います。
開発部は基本的には短期の評価はせず、長期的な目標に対して腰を据えて取り組むという仕事のやり方です。もちろん目の前にやるべき業務はあるわけですが、私たちのサービスはもう20年やってきて、新規開発をしながら、メンテナンスとも付き合っていく必要があります。
長年の積み重ねにより、当然技術的負債もあります。そこまで潤沢に時間を割けているわけではないですが、会社として十分理解はあるので、負債の解消にも取り組みながら視点は常に長期で持ってほしいですね。
――エンジニアのキャリアパスについても合わせて教えてください。
エンジニアのキャリアパスは、エンジニアリングマネージャーとして開発部・チームを率いていくマネジメントの方向と、自ら手を動かして技術と向き合っていくスペシャリストの方向と、大きくはふたつです。若手のメンバーも多いので、本人の希望や適性を見ながら、これからキャリアパスを決めていく人もいます。
会社全体で「もっとよくしていこう」という意識を持っている
――エンジニア組織として大事にしていることはありますか?
品質は一定担保しながら、サービス改善のスピードは速めたいので、そこのバランスは大事にしています。
また、最近はシンクロ・フードで働いているエンジニアについて知ってもらうための情報発信に力を入れています。たとえば、アウトプットの一環として、業務時間にエンジニアブログを書いてもらうなどです。「こういうことを書いてみたい」と手を上げてくれるメンバーもいますよ。
私たち自身、他社や個人の方が書いた技術記事を参考にすることも多いので、業務で実際にあった課題やその解決策を発信するのは、業界にとって何かプラスになるのではという思いもあります。
――会社としてもエンジニアリングに非常に理解があると感じました。
そうですね。会社の文化として根付いている部分もありますし、私が正統派の技術系出身ではないこともあって、ビジネスサイドの考え方もよく分かるため、エンジニアとの橋渡し役になっていると思います。
あとは、ビジネスサイドからエンジニアに要望が上がることもありますが、逆にエンジニアもビジネスサイドに対して「こういうツールを導入するともっと作業が効率化できるんじゃないか」といった提案を積極的にしています。
少し過去の例で言うと、Redmine(Webベースのプロジェクト管理ツール)やRedash(データベースのクエリを保存したり視覚化したりするデータ分析ツール)の導入もそうですね。
組織を柔軟に変化させながら、新規事業開発も積極的に取り組む
――今後のシンクロ・フードの展望についてお聞かせください。
既存サービスの継続、改善はもちろんですが、新規事業にも注力しています。まだ構想途中で、すぐにエンジニアが参画できる段階ではないものもありますが、中長期的には関わっていただける機会もあるのではないでしょうか。
――新規事業について、具体的に伺ってもよいでしょうか。
2年ほど前からスタートして、今徐々に伸びているのが、移動販売プラットフォーム『モビマル』(キッチンカーやアパレルカーなど移動販売をおこなう方へ、出店場所の提供・マッチングや運営を支援する)というサービスです。最近、社会問題の解決や、飲食店の新しい軸として注目されていて、業界としても盛り上がっているという背景があります。日々成長しているサービスで、エンジニアとしてもとてもおもしろいサービスですね。
もうひとつ、まだまだ構想段階ですが、TikTokやInstagramのリールなど、ショート動画のフォーマットを使って何かサービスを展開できないかと考えています。グルメ紹介をはじめ、短尺の動画は飲食業界に結構合っているんですよね。コンテンツについてはこれからですが、技術的にも新しいチャレンジをしながら進めていくつもりです。
――最後に応募を検討されているエンジニアの方へメッセージをお願いします。
現在のシンクロ・フードの開発組織は成長フェーズで、サービスはもちろん若手メンバーの育成も大きなテーマです。サービスが小さいころは個々人に頼る形で、企画から開発、そのあとの運用保守まで担っていました。しかし、今はサービスも組織も、そしてお客さまに与える影響も大きくなり、チーム化して役割分担しつつあります。
そのため組織づくりや若手の育成など、マネジメントに興味がある方は、当社でよりやりがいを感じていただけるのではないでしょうか。向上心のあるメンバーも多くて、エンジニア組織でマネジメントをやりたい方にとってはよい環境だと自負しています。
もちろん将来にわたって同じ形というわけではなく、これまでどおり、サービスの成長に合わせて組織のあり方は柔軟に変化させていくつもりです。
大久保さん、ありがとうございました。
コロナ禍で大きなダメージを受けた飲食業界。自社も影響を受ける中、お客さまをサポートすべく、会社としてサービスを無償提供するなど、「ITの力で飲食業界をもっとよくしていきたい」という思いが伺えました。
同時に、サービスの多角化で複数のマネタイズのポイントを持ち、フルリモートワークをスムーズに導入・継続している点から、企業としてのスマートさも感じます。
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シンクロ・フードのますますのご発展をお祈りしております。