特に自社サービスを開発している企業では、開発技術だけでなく論理的思考力や行動力などどいった力を見られるケースも増えています。このページでは、具体的に見られているポイントと、どうやってアピールしていけばいいかを解説していきます。
ポイント1:論理的思考
エンジニアにとって論理的思考ができるかは大きなポイントです。
面接では、質問の意図を理解したうえで、筋道を立てた分かりやすい説明で回答できるかどうかなども見られています。何度も的外れな受け答えをしたり、話が脱線したりすると、「論理的に考えられない人なんだな」と思われてしまうでしょう。
例(1)
とにかく自分の考えていることを話そうとする人
NG理由
自分の意見が周囲と対立したり、指摘を受けたりした時に、素直に受け入れることができていますか。もちろん明らかに周りの人が間違っている場合は、説得して理解してもらう必要もあるかと思います。
ただ、「自分が絶対に正しいから、違う意見は受け入れない」「自分の意見を押し通したい」という考えがあると、「柔軟性のない人なんだな」と思われてしまいます。
まずは「質問の意図」を理解しましょう
自分と異なる意見を言われても、「それは間違っている」「その案にはこんなデメリットがあるからダメだ」と頭ごなしに否定してはいけません。相手の考えと自分の考えは、それぞれどこが正しくてどこが間違っているのか、どんなメリットとデメリットがあるのか、冷静に整理して考えるくせをつけましょう。
面接官からの質問には、必ず意図があります。「自分をよく見せなきゃ」と意気込んで、どんな話も自己アピールにつなげようとする人がいますが、質問によっては面接官の意図とずれた回答になっているかもしれません。
「簡単に説明してください」と言われているのに長々と説明したり、「はい」か「いいえ」を聞かれている質問に全然違う答え方をしたりするのも、「論理的に考えて話せない人なんだな」と思われてしまいます。面接官が何を聞きたいと思っているのか、質問の意図を考えて答えるようにしましょう。
例(2)
結論から話せない人
NG理由
「面接では結論から話しましょう」と言われたことはありませんか。これは、結論は最後に話すよりも先に話したほうが、聞き手にとって理解しやすいからです。「論理的に考えられる人だな」と思ってもらうには、初対面の面接官でも理解しやすいように話すのが重要です。面接官に「話がわかりにくかった」「何度も論点がずれていた」と思われてしまうと、「論理的思考力のない人」という印象になってしまいます。
「つまり一言で言うと?」と自分に問いかけてみましょう
ふだんから結論から話すように心がけてみましょう。日々の会話の中で、「今の話を一言で言うと?」と考えていると、自然と結論から話せるようになります。また、自分の周りに「結論から話すのがうまいな」と思う人がいれば、その人がどんな話し方をしているのか、よく聞いて参考にするのもよいでしょう。
「まとめますと……」と結論を話してしまいましょう
面接ではどうしても緊張してしまうので、結論から話すことを忘れてしまったり、説明がつい長くなったりしてしまいがちです。「面接官がけげんな顔をしているな」と思ったら、「つまり、まとめますと……」と切り替えてから、結論を話してしまいましょう。「結局どんな結論なのか」が分かりやすく伝えられれば、話の前半で多少の失敗があっても挽回できます。
例(3)
説明が端的すぎる人
NG理由
回答が端的すぎると、考えている過程が面接官に伝わらず、論理が通っていないように感じられてしまいます。また、回答内容が「客観的な事実」なのか「主観的な考え」なのかも判別がつきません。
たとえば、「私はDだと思います。なぜなら事実Aと事実Bがあり、仮説Cが立てられるからです」という話なら、あなたがDだと思った経緯と事実関係がすぐに理解できます。しかし、いきなり「Dです」とだけ言われると、「どんな経緯でその結論にいたったのか」が省略されているので、聞いている方は混乱し、「話の筋道がわからない、論理が通っていない」と感じてしまいます。
結論にいたった過程も話しましょう
相手は、あなたことをよく知っている友人ではなく、初対面の面接官です。あなたのことなど何も知らないのですから、「どんなプロセスを経て、何を考えているのか」をしっかり説明しなければ、理解してもらうことはできません。自分の中で「少し丁寧すぎるかな」と感じるくらい、考えの過程を話すことを心がけましょう。
ただ、ていねいに説明しようとすると、客観的な事実と自分の考えや感情を混同してしまいがちです。「事実としては○○という結果でした」「自分は○○と感じ、△△と考えました」というように分けて説明ができると、話がさらにわかりやすくなります。
ポイント2:戦略的思考、ビジネスセンス
特に自社サービスを開発している企業では、エンジニアにも経営的な視点が多く求められます。面接官は、あなたのこれまでの経験や考え方などを聞いて、いろいろな観点からその素質を見極めようとしています。
例(1)
使う技術にこだわりが強すぎる人
NG理由
これは「作るもの」ではなく「プログラミングという行為」にしか興味がない人に多いケースです。
ビジネス視点で考えると、利益を上げて価値を生み出すのは技術そのものではなく、技術を使って作られたシステムです。企業にとって、技術はサービス実現のための手段にすぎません。技術にこだわりがあるのは悪いことではありませんが、「この技術が使えたら作るサービスは何でもいい」などと技術にしか目を向けていないと、「柔軟性がなく、ビジネス視点が足りない人」という評価になってしまいます。
技術は「目的」ではなく、サービス実現の「手段」です
技術は手段です。たとえば仕事で新しい技術を導入したい場合、ただ「自分が使いたいから」「便利そうだから」というだけでは許可されません。「その技術がサービスや会社の目的にどんな利益をもたらすか」の説明が求められます。技術調査などをする場合も「新サービスの開発に適した調査」といった感じで、目的の根本はサービスに置かなければなりません。
技術に対してもビジネス目線で考えるには、会社やサービスの目的を理解しておく必要があります。面接で「技術的なこだわりだけが強くて、事業やサービスのことは全然考えていない人」という印象にならないよう、応募先のビジネスモデルを把握しておきましょう。
例(2)
作りたいものを作るだけの仕事がしたい人
NG理由
もちろん業務外の取り組みであれば「作りたいものを作る」でよいのですが、業務ではそんなわけにはいきません。ターゲットに合わせたサービスや、それをよりよくする機能、既存システムとの調整や納期などを考慮しながら、会社としての利益につながるシステムを開発することが求められます。
「作りたいものを作る仕事だけしていたい」という人は、価値のあるサービスを作るためのビジネス視点が抜けています。ビジネス視点を持たずに、ただ「仕事でも自分の作りたいものを作る」という考えでいると、面接では「コスト意識がなく、視野が狭く、会社で働くということが理解できていない人」だと思われてしまいます。
企業は営利目的で事業展開をしています
企業はあなたが作りたいものを作る場ではありません。価値のあるサービスが提供できて初めて売り上げが出て、利益を得ることができます。企画や経営部門の人たちは、「どうやって利益を出すか」「どんなサービスをいつローンチするか」を考えています。エンジニアが作りたいものを作るだけでは、事業は継続できません。
これまでの経験や応募先で運営しているサービスに対し、「どんなユーザーにどのような価値を提供し、企業にはどんな利益をもたらすのか」といったビジネス目線を持って、経歴の棚卸しや企業研究をしましょう。
例(3)
スペシャリストキャリアを目指している人
NG理由
スペシャリストを目指す人は技術ばかりに目が行ってしまい、ビジネス視点が欠けている場合があります。
スペシャリストというのは、ただ専門性の高い技術を極めただけの人ではありません。専門の技術があったとしても、それを利用するシーンや新しく生み出せるサービスなどをイメージできていないと、企業にも「スペシャリストとしてビジネスを牽引してくれそうなイメージがわかない」と思われてしまいます。
スペシャリストほどビジネスへのコミットが必要です
スペシャリストは「技術のことだけやっている人」ではありません。スペシャリストほど「その人が持つ技術的な専門性が、会社のビジネスにどのようなインパクトを与えるのか」を求められます。「スペシャリストになったあなたは何を実現しているのか」「スペシャリストとして何を成し遂げたいのか」といったイメージを膨らませておきましょう。
ポイント3:アイデア、発想力
企業の成長には、現状をよりよくするための創意工夫が欠かせません。即戦力を求める中途採用で、「創意工夫ができないマニュアル人間な人」は評価が低くなりがちです。「発想力がない人だな」と思われないように対策しておきましょう。
例(1)
自分の考えを含めた説明ができない人
NG理由
「画期的な新しいアイデアを思いつく力」だけが発想力ではありません。面接ではむしろ、日々の仕事において「創意工夫できる力」が重視されます。
たとえば、AとBのタスクを頼まれた際に「AとBの中で、この部分は同じような処理をしているから共通化できるな」「この部分は以前作った別のシステムが使えるな」というように、効率的に進める方法を考えたりしますよね。こうした創意工夫できる姿勢が面接の中で見えないと、「言われた仕事を言われた通りにするしかできない人なんだろうな」「うちに入社しても、自分で考えて創意工夫してくれないだろうな」と思われてしまいます。
また、業務経歴を聞かれて「自分がやったこと」しか説明できない人も、「自分の担当範囲の仕事しか頭になく、発想力が乏しい人だな」と思われてしまいます。
経歴などは「自分が日々の仕事の中で工夫していること」も含めて話しましょう
どんな些細なことでも構いません。「この仕事をした時は◯◯な工夫をしてうまくいきました」「こういった仕事をする時は◯◯に気をつけています」といったことが話せるように、過去の仕事を振り返っておきましょう。
ただし「経歴について簡単に説明してください」と言われた時に細かく話しすぎると、「簡単にと言ったのに、話が長すぎてわかりにくい」と思われてしまいます。経歴の細かい話は「前職の◯◯というプロジェクトでは、具体的にどのようなお仕事を担当されていたのですか?」というように、さらに詳細を聞かれた時に話しましょう。
経歴は広い視点から狭い視点に向かうように説明しましょう
たとえば「Web広告事業を展開しているA社からいただいた案件に参加した時は、サービスの特性上、処理速度が重要になると考えていました。そのため、担当していたのは、末端の開発業務ではありましたが、他のモジュールとの連携をしても速度が落ちないように意識をして実装を行いました」など、まずはそれがどんな事業かという話からスタートするのがよいでしょう。「手元の仕事をただこなすだけでなく、ビジネス全体を広い視野で捉えられる人なんだ」「発想力が必要な仕事も任せられそうだな」と思ってもらいやすくなります。
例(2)
AIや機械学習など、新しい分野に挑戦したいと考えている人
NG理由
「新しい技術でおもしろそうだから機械学習をやりたい」という人は非常に多いです。しかし、「実際に自分で機械学習を使ってこんなものを作ってみた」「機械学習を使ってこんな仕事を成し遂げたい」などと言える人はほとんどいません。
新しい技術に取り組みたい気持ちはわかりますが、その技術を使って、ビジネスとして価値のあるサービスを作れなければ意味がありません。AIや機械学習などの技術は、あくまで何かを実現するための手段です。「やってみたい」だけではなく、「具体的に何を実現したいか」までがイメージできていないと、「やりたいと言っているだけの、発想力がない人」と思われてしまいます。
「その技術を使って何をしたいのか」までを考えましょう
使いたい技術があるなら、「それを使って何を作りたいのか」「それがユーザーにどんなメリットをもたらすのか」までを含めた話ができなければ、意欲は伝わりません。
AIや機械学習のような最先端の分野は、豊富な開発経験のある方や、学生の頃から情報系の研究をしてきた方でも難易度の高い分野です。「そこまで考えていなかった」「実は機械学習についてよく知らない」「自分で勉強できる自信がない」という方や業務経験の浅い方は、ほかの分野へ目を向けたほうがよいでしょう。
ポイント4:リーダーシップ
リーダーシップを「チームの先頭に立って導いていくこと」と思っている人は多いですが、それだけがすべてではありません。面接ではむしろ、リーダーシップにおける主体性や責任感といった要素が重視されます。そのため、実際にリーダー経験がない人でもリーダーシップをアピールすることは可能です。リーダーシップが原因で落とされる人に多い2つの傾向から、効果的なアピール方法を学びましょう。
例(1)
スペシャリストキャリアを目指している人
NG理由
スペシャリストになれば「好きな技術の研究だけをしていられる」と思っている人は多いですが、企業で求められているのは、趣味や学問ではなく、仕事としての研究開発です。「自分が企業の技術をリードしていくのだ」という責任を持って、自分から主体的に取り組む姿勢がなければスペシャリストは務まりません。
「技術だけに触れていたいからスペシャリストになりたい」「人と関わったりチームを引っ張ったりするのは嫌だ」と考えていると、面接官に「組織の技術力を率先してリードしてくれなさそうだな」と思われてしまいます。
自分が目指すキャリアに必要なスキルを考えましょう
特定の技術に特化した研究開発職などの場合でも、企業の技術をリードしていくようなポジションを目指すのであれば、リーダーシップは少なからず必要になります。少なくとも、受け身で主体性のない人、責任感のない人には務まりません。まずは「自分が目指すキャリア」と「そのキャリアを実現するために必要な要素」を考え、リーダーシップの必要性を考えてみましょう。
また、考え出した必要な要素について、「すでに自分に備わっている要素」「今の自分に足りない要素」を整理しましょう。この整理ができているだけでも、「ちゃんとキャリアについて考えているし、将来的には会社を引っ張る存在になってくれそう」と思われやすくなります。
「リーダー候補」などの求人は避けましょう
「リーダー候補」や「CTO」「マネジメント職」などの求人では、ほとんど必ずリーダーシップが求められます。リーダーシップをとるのが苦手な人や、リーダーシップが必要ないポジションを目指したい場合は応募する求人を見直したほうがよいでしょう。またその場合は、リーダー的なポジションよりも「技術志向が強い人を募集しています」と書かれている求人を探してみましょう。
例(2)
リーダー経験がない人
NG理由
リーダー経験がない人は「リーダーシップはアピールできない」と考えがちです。しかし、将来的にリーダー候補となり得るポジションを募集している企業であれば「リーダー役を任せられるかどうか」という視点で応募者を見ています。
リーダー経験がないからと言って、リーダーシップをアピールできる話がまったく出てこないと、「リーダーは任せられそうにない」と思われてしまいます。
「責任感」を中心にアピールしましょう
リーダー経験がなくても「リーダーを任せられそう」と思ってもらうことは可能です。そもそも今まで自分がしてきた仕事のリーダーは、自分自身です。任された仕事をするために、誰かに聞いたり調べたり、自分なりに工夫したりしたことがあれば、十分にリーダーシップを発揮した経験があると言えます。こうした経験を話せば「仕事で必要なリーダーシップを持っている人だな」と思ってもらうことができるでしょう。
特に自主性と責任感を持って仕事してきたアピールをすれば、「リーダーシップがなさそう」と思われることはありません。
ポイント5:行動力、実行力
「行動力」は物事を始める力、「実行力」は物事をやり遂げる力です。これらは、仕事をするうえで非常に重要で、面接でも重点的に確認されるポイントです。
面接官に「この人なら、仕事でも自ら行動を起こしてやり遂げてくれるだろう」と思ってもらえるように、しっかり対策しましょう。
例(1)
実行理由が外的要因ばかりの人
NG理由
「この仕事でなぜこうしたのか」「なぜこれを選んだのか」と聞かれて、「上司に指示されたから」「先輩が同じようにしていたから」などとしか答えられない人は要注意です。自分で「こうしよう」と考えたわけではなく、上司や先輩といった外的要因がないと行動できない人は、指示待ち人間だと思われてしまいます。
企業が求める行動力とは、「自分から考えて行動に移せる力」です。言われたことを言われた通りにやる(言われるまで動かない・自分で考えたりしない)だけだと、行動力があるとは思ってもらえません。
内的要因による行動理由を話せるようにしておきましょう
面接官は、行動の原動力を聞くことで、「どんな仕事を任せたら活躍してくれそうか」を知りたいと考えています。「誰かにやれと言われた」という外的要因だけでは「言われたことしかしてくれなさそうだな」と思われてしまうでしょう。
逆に、「知りたい、やってみたい、楽しいという知的好奇心から」「先輩はできたのに自分にはできなくて悔しかった経験があり、自分もできるようになりたいと思ったから」というように、自分の中から行動理由が湧き出てくる人であれば、「うちの仕事でも活躍してくれそうだな」という印象になります。
例(2)
目的意識が低い人
NG理由
実行力とは、「目的のために計画を立て、それを実行に移してやり遂げる力」です。まず目的が明確でないと、計画も立てられませんし、実行に移すこともできません。転職理由やこれまでの仕事内容を聞かれた時に、「○○を実現するために転職活動をしています」「○○という目的があって、こんなことをしていました」といった話ができないと、「実行力がない人」だと思われてしまいます。
目的を明言してから行動内容を話しましょう
常に明確な目的を持って物事に取り組んでいれば、その話をするだけで「実行力がある」と思ってもらえます。たとえば、転職理由を聞かれて「私は○○になりたいと思っています。しかし、現職ではその目的を達成できそうにありません。そのため、○○のキャリアが積める企業への転職を目指しています…」と話すだけでも、「目的意識と計画性があり、その達成を目指して着実に行動できる人」という印象になります。
これまでの経歴を聞かれた場合も同じです。大きなプロジェクト全体の目的から始めて、その後に自分の役割などを話すことで、「目的意識を持って仕事ができる人」だと思ってもらえます。これまでの仕事にどんな目的があったのか、改めて振り返っておきましょう。