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教育活用事例

高校のプログラミング学習で論理的思考法を身につける
広尾学園・昭和学院での事例

広尾学園・昭和学院

paizaでは、2022年7月28日に「プログラミング授業の実践ノウハウ満載 paizaラーニング活用セミナー」を開催しました。

同セミナーでは、昭和学院中学校・高等学校で理科・情報科の教諭を務める榎本裕介氏から、paizaラーニングを活用した反転授業の実践についてお話しいただきました。プログラミングを通した科学的思考の強化はどのようなものか、その様子をお届けします。

生徒の理解度を上げるため反転学習を取り入れる

広尾学園・昭和学院

榎本教諭は2011年から2021年まで広尾学園で、2021年から昭和学院で教鞭を執っています。理科の教諭として広尾学園に在籍している2019年に授業でpaizaラーニングを採り入れます。並行して自身も情報科の教員免許を取得し情報技術も教える立場になりました。

まず榎本教諭は、広尾学園で反転学習を採り入れた授業を展開し、生徒により深い理解と応用力を身につけてもらうよう工夫を始めました。

反転学習とは、一般的な授業の流れになる「学校の授業で学習し、自宅で復習する」という学習の流れを「自宅で予習し、学んだことを学校で復習する」という流れに変えたもの。予習した内容に基づいて演習問題を解いたり生徒同士で話し合ったりしてもらうことで、より高い理解を促そうとすることが狙いのひとつです。

広尾学園・昭和学院

榎本教諭(以下、榎本):情報科の授業においてpaizaラーニングは、予習部分で活用していました。実際に優れた動画コンテンツと教材があれば、教師が今までやっていた「最初に教える」というステップは不要になると思っています。生徒に「先生、初めて知った。ありがとう」と思われることはこれからの教師の仕事ではないといっても過言ではありません。

paizaラーニングを反転授業の予習部分に取り込み、授業の前に課題として「家でやってきて」と生徒へ伝えます。学習するとpaizaラーニング上で認定証が付与されますので、そのスクリーンショットを提出課題にするんです。※1

授業中は、paizaラーニングの問題を共有し、生徒同士が話し合ったり教師が解説したりすることで理解を深めていきます。宿題も「何月何日までには入門編のこの章まで終わらせるようにしよう」といった反転学習のスタイルで運営していました。

※1 2023年4月から、学習状況レポート機能により、スクリーンショットの提出をさせずに生徒の学習状況が把握できるようになりました。

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反転学習では、授業中に実習する機会がよくあります。paizaラーニングを使って学ぶ生徒たちに対し、榎本教諭は環境に恵まれていることを伝えているそうです。反復学習で実習時間が増えることにより、質問の機会が増えること、それに答えてくれる存在があるメリットを、榎本教諭は次のように説明しました。

榎本:授業中に黒板の前に立つようなことはほとんどなく、実習の最中、質問待ちでうろうろすることがあるんですね。そんな中気づいたのですが、先生に質問すること自体をためらう生徒がいるんです。

paizaラーニングでも、有料会員であれば画面右下のボタンから、現役エンジニアに質問できるようになっています。ところが生徒たちはこのありがたみが分かりません。

体系化された知識を持つプロに質問できることは、自分がググるよりも有用だと気づけていないんですね。経験の浅い自分が調べる情報と、すでに実践している人に聞くことの価値の違いが分かっていません。

ソーシャルゲームをする生徒たちにはこう言うんです。「極端な話、お金をはらって学校に学びに来ている生徒たちは、paizaラーニングよりもはるかに大きな額を学校に課金している」と。生徒たちも「確かに質問しないのはもったいない」と気づくみたいで、それからは先生に質問できるようになります。

塩化ナトリウムの量り取りにも思考法が現れる

広尾学園・昭和学院

榎本:論理的思考の例をひとつ挙げます。電子てんびんを使って、5.0グラムの塩化ナトリウムを量りなさい、という課題を出したとしますね。

うまくいかない生徒のありがちなパターンとしては、いきなりざーっといれて、一瞬で5.0グラムを超えてしまう。これも困りますが、逆に最初が0.1グラムだったら、ずっと0.1ずつ加えていく、という生徒がいるんです。最初に0.1加えて、次も0.1入れてというのは無駄じゃないですか。さっき0.1なら次はもっと多く加えてもいいんです。

フローチャートに書いたような、経験から5.0グラム以下だろうという量を足して、半分に至ったのなら、次はもっと少ない量を足す。半分に至らないならさきほどよりも多めに足す。とできますよね。

こうしたプログラミングで用いるような判断や繰り返しは、理科の実験と同様の思考力が求められるのではないかと思います。プログラミング的思考が理科の実験を上手にするきっかけとして使えるのではないかと考えました。

もともと広尾学園では理科実験という授業のコマがありました。2020年のコロナ禍でオンライン授業になったことから、実験ができなくなってしまったんです。

そこでわたしから、中学1年生から3年生までの理科の実験で養う力は、実験の動画をみるのではなく、プログラミング学習としてpaizaラーニングをしてもらおうと提案しました。質問をなどをサポートするようにすることで、理科実験と同じ力が身につくのではないかと考えてのものです。

不得意な子もいましたが、中学校1年生でpaizaラーニングのCランクの問題を何問も解く生徒は出てきました。自宅でPCを前にプログラミングを学習することで、理科の実験の得意・不得意を知ってもらえました。

プログラミング学習を通して得られる思考法とは

2021年に昭和学院に赴任した榎本教諭。広尾学園時代からおこなっていたオンライン授業を計画し、2年の準備期間をへて2023年度からサイエンスのコースを始めようとしています。


朝のプログラミング学習

広尾学園・昭和学院

榎本:本校では朝8時から8時20分まで読書の時間があります。この時間を本気で活用してみようと思い、ChromeBookを用意して、生徒にpaizaラーニングで学習してもらうようにしました。

学習とスキルチェックの時間を合わせても、Cランクくらいであれば20分で切りのよいところまでできると思います。動画であれば、生徒の進み具合に応じて先を観られますので、教員が教えなくても、生徒がどんどん進められるようにしてみようと考えました。

情報の教員は複数名いますが、それでも一クラスにつきっきりで指導し切る時間が取れません。そこで、教師がいない状態でもトレーニングができるpaizaラーニングを活用しようと思ったんです。

中高のプログラミング学習で、プログラミングでもノーコードのものばかり続けてしまうと、大学でコードを書くところでハードルがぐんと上がってしまう、という話も聞きます。毎朝20分、paizaラーニングでPythonを学び続けたら1年後にどうなるか、見てみたいと思っています。

正直、火がつけば夏休みなどにも勝手に遊んで覚えていくと思うんですよね。火をつける時間として毎朝やってみて、と考えています。


「情報I」をどう教える?

2022年度から新しく始まった高校のカリキュラム「情報Ⅰ」。必修科目にもなり、2025年1月の共通テストからはプログラミングを含む「情報」の問題が試験範囲に含まれる予定です。

榎本教諭はこの「情報Ⅰ」について、ボリュームの大きさを危惧します。

榎本:情報の教科書をしっかり読みますと、やらなければならないことがものすごくたくさんあります。ちゃんと体系立てて教えようとすると、とても実践を交える実習ができないまま終わりそうです。

しかし、教科書の内容を分類してみると、前半部分はなんとかなる部分はあると思っています。


授業内の小テストで知識を集めさせる

榎本:広尾学園での実践事例ですが、授業の開始時にいきなり「5分間のクイズを出します」と予告していたことがありました。ネットを使ってもいい、教科書も読んでいいというルールで、早くできた人から加点していくというプレッシャーでやったんですね。

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榎本:問題例のひとつがこちらです。生徒たちはIPアドレスという言葉を知らない状況ですが、1分もあればIPアドレスについて、一定の情報を得られると思うんです。教科書にもIPアドレスの小見出しがあります。

ネット上で調べるより教科書を読んだ方がたどり着きやすそうな選択肢、教科書には載っていない、ローカルIPアドレスを扱った選択肢が出てくる問題を出すことで、生徒たちは必死に調べます。

広尾学園・昭和学院

榎本:また、SSDが補助記憶装置という、教科書には基本中の基本として出てくる問題も出しました。何も教えない状態ですと生徒は5分くらい、必死に調べます。

そうして考えさせた状態で教師側から「教科書に載っている補助記憶装置はこうだよ」というような説明をすると、スポンジが水を吸収するかのごとく、生徒の頭に情報が浸透していきます。

まっさらな状態から教えるのと比べても、このほうが知識の定着率が高いとおもうんです。このやり方のほうがあきらかに時間も短縮できるので、こうしたスタイルを検討しつつ伝えていかなければと思います。

広尾学園・昭和学院

榎本:とはいえ、プログラミングは実践していかないと身につきません。これについては、自分が手作業でつらい思いをしたことが簡単にできるんだよと伝え、感動を覚えてもらうことで、モチベーションを上げたいなと思っています。

いまだに中高の理科では、方眼紙に実験結果のグラフを書く先生がたくさんいます。こうした不毛とも言える作業を生徒たちがたくさんしていて、いざ会社に入ってみると「なぜコンピュータで描けないのか」と叱られる理不尽を味わうことにもなってしまうんです。

生徒たちに「こんなに簡単にデータを可視化できるんだよ」「理科実験であれだけつらい思いをして点を打っていたことが、こんなに簡単にできるんだよ」と伝えると、なんとすばらしいことだ、と思ってくれるんです。

思考法を学ぶためにプログラミングを学習する

paizaラーニングがこれからの教育で効果的だと榎本教諭は語ります。思考法を学ぶためのプログラミング学習が効果的と語る、その真意は何でしょうか。

榎本:生徒は、われわれ大人が予想もしない、「え? そこ? 」という場所でつまずいてしまうものです。それを取り除き、これからの時代に必要な学び方そのものを、プログラミングを通して伝えていけるのではないかと思っています。

エンジニアになるため、プログラマとして仕事でコードを書くためではなくて、その思考法を学ぶためにプログラミングを学ぶことにはとても価値があります。IT化が進まない会社や学校関係者がいるのであれば、それは実際にITでできることが分からないからです。

本校でも、わたしが強引にIT化を進めていった結果、ITが苦手なベテランの先生からも「もしかしてこういうこともできるんですか?」と質問を受けるようになりました。

できることを知る、という意味で、プログラミングを学ぶことに価値があるのではないかと思います。目的ではなく結果として、そのきっかけさえあれば、IT人材が段々と育っていく状態ができるのではないかと思いますよ。


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